冬季東アジアモンスーンにおける北西太平洋の微小エアロゾル分布に対する自然起源および大陸起源の影響
- Keywords:
- Northwestern Pacific Ocean, Ship-based observations, Marine boundary layer, Aerosols, Sea-spraying emission, Volcanic emission, Southeast Asian biomass burning, Long-range transport
本論文は2021年冬〜初春の北西太平洋 (NWPO) において実施された海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」の研究航海で得られた微小エアロゾル・気象・海象観測のオーバービュー論文である。雲凝結核 (CCN) 数のプロキシ (直径>100 nmの粒子数) は、研究対象海域全域でブラックカーボン (BC) と硫酸塩濃度と正の相関を示した。遠洋でもCCN数の増加は主に燃焼起源などの非自然起源に結びつき、自然起源 (波しぶき) の寄与は限定的であることが示唆された。また、緯度帯で対照的な描像も得られた。亜寒帯 (>35°N) では強風時に海塩粒子が微小粒子質量を支配し、その変動は海洋性大気境界層 (MBL) 構造と風波条件でよく説明された。亜熱帯 (<30°N) では、東南〜東アジアからの総観規模の気塊流入により、CCNプロキシと非海塩成分 (硫酸塩・BC・金属) が共に増加し、発生源から1,000–1,500 km離れた海域のCCN数にも影響を与えていたことが示唆された。また、航海中は噴火していなかった西之島近傍でも、火山性の硫黄 (二酸化硫黄) の放出が硫酸塩質量と粒子数の増加に有意に寄与していた。現場船舶観測により、冬季東アジアモンスーンにおけるNWPOのエアロゾルの濃度・微物理特性、自然起源 (波しぶき) の寄与を明らかにしたとともに、さらなる観測 (例えば、粗大エアロゾル、窒素酸化物成分) の重要性も示した。