日本語要旨

駿河トラフ浅部領域における数ヶ月続くスロースリップイベントの検出

本研究では、GNSS(全球測位衛星システム)データを用いて、南海トラフ東端に位置する駿河トラフ浅部における、継続期間が数ヶ月に及ぶスロースリップイベント(SSE)の検出を試みた。駿河トラフ上盤-下盤間でのGNSS基線長の時系列データと、基線短縮を表現するテンプレート関数との相関係数を評価する手法により、2019年後半に継続期間約4か月のSSEと考えられる信号を検出した。同期間の水平変位ベクトルに対して、ハミルトニアンモンテカルロ法に基づくすべり分布の推定を行った結果、御前崎沖の浅部プレート境界(深さ10 km以浅)において10 mmオーダーのすべりが推定された。また、すべりが海溝付近まで達していることも示唆された。推定されたモーメントマグニチュード(Mw)は約5.5〜5.6であり、仮定した複数のプレート境界モデルにおいて一貫した結果が得られた。本SSEは、北側かつ深部側における小繰り返し地震の活動増加と同時期に発生していた。さらに、検出基準を緩和することで、類似した小規模SSEが約500日間隔で繰り返し発生している可能性も示された。