日本語要旨

KR07-12 PC-07コアの花粉分析からみる日本海暗色層堆積時の陸上植生と気候パターンの復元

日本海の大和海盆北部で採取されたKR07-12 PC-07コアの花粉分析に基づいて、東アジアモンスーン変動と関連する日本海暗色層の堆積時期における日本列島の陸上植生と気候環境の復元を行った。KR07-12 PC-07コアの花粉分析の結果、暗色層中においては比較的高い総花粉含有量が認められた。一方、明色層中の総花粉含有量は非常に少なく、総花粉含有量とL*値との間には負の相関が認められた。このことから、大和海盆堆積物の花粉化石群集は、明暗互層に対応する海流や大気変動に伴う花粉の運搬・堆積過程の変化に大きく影響を受けていることが予想された。大和海盆堆積物の暗色層に含まれる花粉化石は、日本列島固有樹木であるスギやブナが優占していたことから、日本列島の植生が主要な花粉供給源であったことが示唆される。さらに、花粉含有量が高かった暗色層中の花粉群集組成は、鳥取沖のIODP Expedition 346 U1427コア、陸上の琵琶湖堆積物のそれと類似した変動を示すことが明らかになった。KR07-12 PC-07コアの暗色層中の花粉群集組成を見ると、花粉含有量が比較的多い間氷期から氷期に向かう移行時期には、スギ花粉優占暗色層(Cry-DL)と落葉広葉樹花粉優占暗色層(TDB-DL)の2種類の群集パターンが認められた。このことは、日本海で暗色層が堆積した時期において、陸域では異なる2つの植生と気候のパターンが存在していたことを示している。現在の植生分布と気候の関係から、Cry-DLの堆積時期においては、夏季日射量が弱く、年間を通して降水量の多い、季節較差の小さい気候であったと推定される。一方、TDB-DLの堆積時期には、夏季日射量が強く、冬季が乾燥した季節較差の大きい気候であったと考えられる。