オーストラリア北西沖大陸棚における間隙水の起源:水素・酸素同位体比からの知見
- Keywords:
- North West Shelf, Carbonate platform, Geohydrology, Miocene
堆積岩は間隙水との相互作用によりその物性や化学組成を変化させる.そこで,間隙水の起源および挙動の解明が続成作用のメカニズムを明らかにする上で重要な課題である.本研究では,国際深海科学掘削計画(IODP)第356次航海において,オーストラリア北西沖の大陸棚縁辺部下に分布する中新世から第四紀の炭酸塩プラットフォームから採取された間隙水の水素および酸素同位体比を測定した.この同位体比データと船上データである塩分,元素濃度(カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム,ナトリウム,臭素,塩化物イオン,硫化物イオン)ならびに堆積物の孔隙率を統合的に解釈することにより,大陸棚における間隙水の起源を明らかにした.間隙水は塩分に基づいて上位より3グループに区分される.グループ1(塩分 = 34–40)の上部は現在の海底から浸透した低塩分水からなり,下位に向かい高塩分水に遷移する.この高塩分水は現地で氷期に形成された化石海水であると考えられる.グループ3(塩分 = 101–153)は乾燥した沿岸環境において蒸発作用を被った後期中新世の海水を起源とする極めて塩分の高い水である.グループ2(塩分 = 43–98)はグループ1とグループ3の混合と解釈される.本研究は現在および過去の炭酸塩プラットフォームの地下水に関する新たな知見を提供する.