日本語要旨

西太平洋暖水プール上空における一酸化ヨウ素・オゾン変動を駆動するプロセスの評価

ヨウ素化学は海洋上の対流圏オゾン破壊に無視できない影響を及ぼしている。ヨウ素化学の影響は大気化学輸送モデル(CTM)を用いて広く調査されてきたが、海洋境界層内(MBL)で観測される一酸化ヨウ素(IO)とオゾンの変動を支配する要因は未だ解明されていない。そこで本研究では、2014年11〜12月の西太平洋暖水プール(WPWP)上のMBLにおけるIOとオゾンに対する小規模な気象場変動と、従来のCTMでは十分に考慮されていないオゾン非依存型ヨウ素発生源の影響を評価した。その結果、高解像度 (0.56°)のCTMはIO・オゾン間の負相関関係(r = -0.45)を示し、低解像度 (2.8°) CTM (r = 0.08)と比較して観測される相関関係 (r = -0.7)とより良く一致することを明らかにした。感度数値実験により、異なる解像度のCTMの違いは、小規模な大気輸送過程・ヨウ素放出過程よりも、小規模な大気輸送-化学過程の相互作用に起因することが示唆された。この相互作用によって、高解像度CTMではWPWPのMBL内外の大気混合が抑制され、地表付近のヨウ素によるオゾン消失量が低解像度CTM (0.20 ppbv day-1)よりも高解像度CTM (0.56 ppbv day-1)の方が大きくなると考えられる。さらに、CH2I2、CH2IBr、CH2IClの光解離のようなオゾン非依存型のヨウ素発生源の考慮により、IO-オゾン間の負相関係数 (r = -0.5)がより観測に近づくことが示された。これらの結果は、 WPWPにおけるIOとオゾンの変動において、小規模な大気輸送-化学過程の相互作用やオゾン非依存型の海洋ヨウ素発生源が重要な役割を果たすことを強調している。