日本語要旨

長期観測型海底地震計による2011年東北沖地震震源域北部における余震活動の時空間変化

太平洋プレートと陸側プレートの境界において2011年東北沖地震が発生し、本震後に多数の余震が発生した。このような大地震発生様式を理解するためには、余震活動の時空間変化を把握することが重要である。国内の大学・研究機関により、2011年3月の本震発生直後から同年9月まで数多くの海底地震計を用いた緊急海底余震観測が行われ、本震発生直後の余震活動が高精度で把握されている。その後、我々は東北沖地震の震源域直上において長期観測型海底地震計を用いた地震モニタリング観測を開始した。2011年9月に39台の長期観測型海底地震計を震源域全域に設置し、10ヶ月間の海底地震観測を実施した。2013年9月には30台の長期観測型海底地震計を震源域北部に設置し、約1年後に回収した。本研究では、これらの長期海底地震観測から、東北沖地震震源域北部における余震活動の時空間変化を明らかにした。また、我々は東北沖地震発生以前にも同領域で長期海底地震観測を実施しており、東北沖地震発生前の地震活動と余震活動についても比較可能である。東北沖地震発生前の地震と東北沖地震余震の震源決定の結果、東北沖地震発生時に大きな滑りがあるプレート境界領域における余震活動は本震発生直後から2014年までは低調であることがわかった。このことから、本震時に大きく滑った領域では、本震発生後3年経ても起震応力が回復していないと推定される。東北沖地震発生以前は地震活動があまり見られなかった岩手県沖の領域では、本震直後から活発な余震活動が観測された。この領域は本震時に大きく滑った領域の周辺部となっている。初動の極性による発震機構解析からは、岩手県沖のこの領域では、海洋プレートおよび陸側プレート内で発生する余震の多くは正断層型また横ずれ断層型の発震機構解と推定されたが、逆断層型発震機構を持つ余震も発生していた。さらに、プレート境界付近で発生する逆断層型の発震機構を持つ地震の割合は、2011年から2012年の観測に比べ2013年から2014年までの観測の方が増えていた。逆断層型の発震機構を持つ地震の発生割合の増加は、本震時に大きく滑った領域の周辺から応力状態変化が始まると解釈することができる。この研究による震源要素(震源時、位置)及び発震機構解の情報は次のURLから利用可能である。https://doi.org/10.5281/zenodo.14564691