日本語要旨

深層学習走時検測器と類似波形探索による水圧破砕で誘発された微小破壊活動の詳細観察

室内岩石破壊実験中に生じる微小破壊の震源を決定し、その活動をモニタリングすることは、破壊過程の解明に有用である。本研究では、アコースティック・エミッション(AE)センサの連続収録データから、深層学習による走時検測と、ノイズに埋もれた微小イベントを検出するための類似波形検索を組み合わせて、高品質なAEイベントカタログを作成する手法を提案する。提案手法は以下の5つのステップから構成される.1)短時間平均と長時間平均比を用いた過渡的信号の検出法、および自己回帰モデルと赤池情報量基準に基づいたイベント波形の走時読み取りの2つの古典的自動処理手法を用いて、イベントカタログを作成する。2)1)で作成されたカタログにリストされたイベントの波形と自動検測結果をもとに、深層学習走時検測モデルを訓練する。3)得られた走時検測モデルを連続波形記録に適用して、AEカタログを再構築する。4)3)で得たカタログに含まれるイベントの波形をテンプレートとして、連続波形記録からそれらと類似した未検出のイベント波形を探索する。5)4)で新たに検出されたイベントとテンプレートイベントの震源を、波形相関に基づく走時差読み取り技術を併用した相対震源決定法により高精度に決定する。13の室内水圧破砕実験中に10 MHzサンプリングで連続収録された波形記録(解析対象データサイズ約4.4TB)に提案手法を適用した結果、ステップ1で得られたカタログと比較して約10倍の数のイベントを含むカタログが得られた。再構築されたカタログは、伝播する破壊フロントや、これまで検出されていなかった微動的な活動など、破壊過程に関する新たな特徴を明らかにした。提案手法は手動ラベル付けを必要とせず、連続記録に適用すれば自動でカタログを作成することができる。本手法により、室内実験で得られたAE記録の一層の活用と理解が進むと期待される。