新潟-神戸歪集中帯における歪場の時空間変化:GNSS時系列データを用いた長期的解析
- Keywords:
- GNSS, NKTZ, Strain rate, Fault zone, Earthquake distribution
我々は、国土地理院が1997年~2022年の長期間に亘って提供したGNSSの時系列データを用いて、日本中部に存在する新潟-神戸歪集中帯(NKTZ)における変位場と歪場の時空間変化を、それぞれ1年と3年の時間分解能で解析した。また、線形トレンドを仮定しない定常的な変動の抽出も試みた。その結果、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震といった大地震に伴う余効変動を除去した場合の面積歪速度、最大せん断歪速度、主歪速度の収縮速度は、NKTZの北部の方が中部や南部よりも一貫して大きく、2011年と2012年を除く26年間で、累積の面積歪の収縮の絶対値は5.1 × 10–6、累積の最大せん断歪は3.0 × 10–6に達した。これらの結果は、太平洋プレートの沈み込みの影響に加え、越後平野の厚い堆積層の弾性変形と下部地殻の粘性変形が継続的に発現した結果であると考えられる。最大せん断歪については、NKTZの中部でも比較的大きな値を示しているが、これは跡津川断層帯と牛首断層帯に沿ったクリープによる変形が原因であると考えられる。東北地方太平洋沖地震後は、それ以前と異なり、東西方向の面積歪速度が低下し、その変動は空間変化と時間的振幅の両方に関して、数年のうちに地震前の面積歪速度に戻ったようにみえる。NKTZ北部の東西方向の面積歪速度の短波長成分に関しては、37.0°Nでは、その空間変化が東北地方太平洋沖地震の前後でほぼ同様であり、継続的な収縮を示していることを示している。しかしながら、37.5°Nでは、面積歪速度の空間分布は地震発生前と発生後で変化し、地震前に確認された特徴的な大きな収縮は地震後には見られなかった。さらに、Mj4.0以上の地震はNKTZの中部と南部に比較的均一に分布していた。一方、NKTZの北部では、越後平野の歪集中域を中心に地震空白域が見られ、厚い堆積層の弾性率が低いため、大きな変形しか生じない可能性がある。これらの結果は、将来的にこの地震空白域で大地震が発生する可能性を示唆している。また、NKTZの北部では、過去に比較的多くの大規模な被害地震が発生している。この地域では、高田平野の東縁断層帯が今後30年間に地震が発生する確率が比較的高いこともあり、今後詳細な研究を行う必要があろう。