全球ストーム解像モデルの通年シミュレーションのプロトコルと解析、および今後の展望
- Keywords:
- Global storm-resolving model, DYAMOND, Intercomparison experiments, NICAM, ICON
全球ストーム解像モデル(GSRM)の通年シミュレーションを評価・解析するため、比較実験のプロトコル「仙台プロトコル」を提案する。この実験は、DYAMOND (DYnamics of the Atmospheric general circulation Modeled On Non-hydrostatic Domains)プロジェクトの40日間比較実験を拡張し、季節進行や気候分布などの解析を可能にすることを目指す。GSRMは全球スケールでメソスケール対流系(MCS)をシミュレートできるため、月以上のスケールで大気大規模循環がMCSを通じてどのように再現されるかを明らかにする。実験は、水平メッシュサイズ5 km未満のGSRMを使用し、大気単独または大気・海洋結合モデルで実施される。推奨期間は2020年3月から2021年2月までの1年間だが、柔軟なオプションも考慮されている。出力は0.25°解像度で収集されるが、熱帯低気圧やMCS解析のため、モデル解像度に対応した一部の高解像度変数の出力も必要である。
この実験により、赤道収束帯(ITCZ)、モンスーン、中緯度ジェットなどの大規模循環の気候学的分布と時間変化、ならびにこれらのアップスケール効果を評価できる。3.5 kmメッシュの非静力学正二十面体大気モデル(NICAM)を用いた通年シミュレーションでは、熱帯降水の現実的な東西分布、二重ITCZ構造バイアスの低減、中緯度ジェットの適切な位置と強度が再現された。一方で、ストーム活動の弱いバイアスや、北半球冬季におけるユーラシア上の高温バイアスが確認された。さらに、降水の日周変化を通じた海洋大陸上のコールドプール影響や、中緯度平均流に対する重力波の影響など、スケール間相互作用も明らかになった。この比較実験の他に、今後必要とされる短時間から複数年のシミュレーションによる階層的な比較実験の種類を展望する。