日本語要旨

深層学習を用いた固体雲粒子の客観的判別

雲内には様々な形状の雲粒子が存在している。雲粒子ゾンデ (HYVIS) は、雲粒子を直接観測する測器である。HYVISは観測中に雲粒子を撮影した動画を作成し、一回の観測で110,000フレームのスナップショットを得ることができる。しかし、HYVISで撮影された画像の解析には以下の問題点がある:①目視で解析すると膨大な時間を要する、②主観的な解析になってしまう。

本研究では、深層学習を用いて雲粒子の検出及び分類を行い、これらの解析の問題点を解決するとともに、雲粒子の雲微物理的特徴を統計的に調査することを目的としている。具体的には、物体検出に使用される深層学習モデルであるYou Only Look Once (YOLO) を用いて、2013年にパラオ共和国でHYVISにより観測された熱帯積乱雲の雲粒子の教師データと、HYVISに典型的な形をした粒子を追加した教師データの2種類を学習させ、雲粒子の検出と分類を行った。HYVIS画像のみで学習させた場合、教師データの枚数が少ない粒子の判別精度が低くなった。しかし、HYVISの観測結果に典型的な画像を追加した教師データを用いた場合、HYVISのみの教師データよりも高精度な結果が得られた。さらに、与那国島で観測されたHYVISの画像から雲粒子を検出し、目視解析との違いを調査した。YOLOによる解析結果は目視解析に比べて不定形粒子の検出が少なかったが、その他の顕著な差異は見られなかった。このように、本研究で開発した手法は、固体雲粒子の雲微物理的解析に有効であることが示された。