2021-2022年冬に観測された黒潮続流の冷水渦と風の減衰
- Keywords:
- Kuroshio Extension, Cold-core ring, Mixed layer, Turbulent heat flux, Air–sea interaction
黒潮続流から南に切離し,閉じた流線を持つ強い低気圧性の中規模渦は,冷水渦と呼ばれ,海面の熱交換を通じて大気に影響を与える.冷水渦の大気への影響を調べるために,2021年11月から2022年1月にかけて,船舶および浅海用小型観測フロートを用いて34.5˚N, 150.0˚Eの冷水渦の観測を行った.海面からの熱放出によって,冷水渦の内側と外側で海面水温および混合層水温に顕著な違いは見られなかった.一方,大気海洋相互作用によると見られる海上風の弱化が観測された.この風の弱化が,冷水渦周辺での乱流熱フラックスを抑制していた.さらに,衛星観測によって得られた海上風の回転経験直交関数解析を行い,風の弱化の特性を調べた.その結果,海上風速の極小は渦の中心よりもやや北に変位し,約5 m s–1以上低下していたことがわかった.冷水渦の中心付近に投入された浅海用小型観測フロートは,混合層内の急速な低塩分化を捉えており,黒潮続流との相互作用によって,黒潮続流の北から海水が冷水渦の内部に貫入したものと考えられる.このことは,船舶による水温観測では捉えられなかった黒潮続流北側の低温の海水の冷水渦中への供給が大気に影響を及ぼしていることを示唆している.