新潟県佐渡島中新統中山層の高精度年代モデルの確立に向けたジルコンU-Pb年代と生層序の統合
- Keywords:
- Zircon U–Pb age, Diatom biostratigraphy, Radiolarian biostratigraphy, Middle to late Miocene, The Japan Sea, The Nakayama Formation
珪藻質堆積物の年代決定には珪質微化石の生層序がよく利用されている。生層序は層序の構築や地域間での対比に極めて有用な手法である一方で、そこには評価の困難な不確かさ(根拠となる堆積物の年代の不確かさや地域的差異など)が内在される。そこで本研究では、新潟県佐渡島に分布する中新統中山層を対象として、火山灰層のジルコンU-Pb年代と珪質微化石層序年代との比較によって年代モデルの精度向上を目指した。中山層は約12.3 Maから約6.5 Maの海成珪藻質堆積物であり、柳沢・渡辺(2017)によって珪藻化石層序が構築されている。また、多くの珪長質火山灰層が存在するため、火山灰層のジルコンU-Pb年代と珪質微化石層序年代との比較という目的に最適である。本研究では、珪藻化石層序による年代制約が不十分な中山層下部の放散虫化石層序を新たに構築したほか、合計8枚の火山灰層からジルコンU-Pb年代を取得した。ジルコンU-Pb年代と珪質微化石層序を比較するにあたり、珪藻及び放散虫化石層序の年代値については、その根拠となっている海底堆積物コアの年代モデルを見直し、各生層序イベントに対して堆積速度の変化を考慮した年代値及び年代誤差を新たに算出した。本研究によってジルコンU-Pb年代が得られた火山灰層のうち、中山層上部及び中部の2層準ではそれぞれ6.7 ± 0.2 Maと10.87 ± 0.07 Maという年代値が得られ、ともに珪藻化石層序年代と誤差範囲内で一致した。一方、中山層下部の6層準の火山灰層はいずれも約12 Maの年代値を示し、火山ガラスの主要元素組成にも類似性がみられた。加えて、20 Maから30 Maの古い年代値を示すジルコン粒子がいずれの火山灰層においても多産し、これらは佐渡島の基盤を構成する火山岩類の年代値とよく一致することが分かった。ジルコン粒子の年代分布及び火山ガラスの化学的特徴における類似性から、これら6枚の火山灰層の構成粒子は単一もしくは一連の火山活動に由来することが示唆された。