日本語要旨

河川地形の解析による奥羽脊梁山脈の東西両側の断層活動の相対的評価

東北地方の奥羽脊梁山脈は、東側を北上低地西縁断層帯、西側を横手盆地東縁断層帯という2つの主要な活断層系で境されている。この2つの断層系は、この地域の主要な活断層系であるにも関わらず、その長期的な活動特性に関する情報はまだ非常に限られている。そこで本研究では、奥羽脊梁山脈の東西両側において、山脈の前縁に直交する河谷の地形急峻度指数(normalized channel steepness index)を解析した。その結果、東側山麓の河谷は緩やかであるのに対し、北西側山麓の河谷は急峻であることが分かった。われわれの現地調査によれば、この地域の河床勾配の遷移点は、ほとんどが局所的な岩相境界と関係しているか、あるいは渓谷沿いの砂防ダムであることから、河川システムは定常状態にある可能性が高い。したがって、奥羽脊梁山脈北西部の河谷が急峻であることは、この地域の隆起速度が速いことを示している。両断層系は主に逆断層であり、地下における断層の形状に大きな違いはない.よって、奥羽脊梁山脈の北西部の隆起速度が速いということは、横手盆地東縁断層帯の北側区間のすべり速度が速いことを示唆している。このことは、先行研究の結果や、本研究地域で地表地震断層を伴った唯一の歴史地震である1896年の陸羽地震による破壊が、横手盆地東縁断層帯の北側の区域沿いに限定的であったという事実と調和的である。