台湾の斜め収束にともなう島弧−大陸衝突による造山帯中核変成帯の構造的上昇機構
- Keywords:
- 上昇,島弧―大陸衝突,延性薄化,絞り出し機構,台湾
過去数十年にわたる多くの造山帯の調査により、高圧条件下に埋もれた岩石の構造的上昇機構,つまり延性薄化と正断層の重要性が浮き彫りになった.台湾は,埋没深度50km以上の高圧変成作用を経験した岩石が地表に露出している世界でも数少ない活動的な造山帯のひとつであり,高圧変成岩の上昇プロセスについての理解を深めるための天然の実験室となっている.我々は,台湾造山帯に関するこれまでに発表された研究と,新たに得られた構造地質学的、地質年代学的、流体包有物温度計データを統合して,台湾においては,ごく最近の70万年前頃までの地殻変動と構造的薄化が,造山帯中核変成帯の上昇に重要な役割を果たしていたことを明らかにした.この論文では,玉里帯の高圧変成岩の上昇過程を説明する2ステージのプロセスを提案した.すなわち,第1ステージでは主に沈み込みチャネル内の圧力勾配によって上昇が進行し,第2ステージには,造山帯に平行な広域横ずれ帯である太魯閣剪断帯が,造山帯に垂直な横ずれ帯によってオフセットされる.これによって,上部地殻が構造的に薄くなるにつれて絞り出された高圧岩石からなる湾曲構造が形成された.地殻厚減少の証拠は,主に大きな垂直方向の縮みを記録している低角度の顕著な面構造と,後期に形成された一連のほぼ垂直な鉱物脈から得られている.放射性同位体年代測定によると,第2ステージは240-310万年頃に始まり,北部の脊梁山脈の対曲構造が形成され始めた70万年ころに終わった.この低角度の面構造は、前弧下東部に存在する広域的な伸長剪断帯の下盤で形成されたと考えられる.地殻変動と浸食の複合的なプロセスによって,造山帯の地形的成長は約300万年から100万年未満に限られていた可能性がある.