日本語要旨

LiDAR測量によるマングローブ樹種の空間分布の定量化

マングローブ林は,環境学的にも生態学的にも重要であるにもかかわらず,その分布特性は十分に明らかにされていない.これは,相対的な海水準によって生育域が決まるマングローブ林において,微地形の把握が困難であったためである.潮間帯に位置するマングローブ林内では,泥地や支柱根などによる障害により,従来手法による測量が難しく,短時間で効率的かつ精密に地形測量をすることが難しい.そのため,広範囲の微地形や樹種分布を把握することが容易ではない.本研究ではこの問題を解決し,広範囲のマングローブ林内地形と樹種分布を明らかにするために,沖縄県石垣島の宮良川マングローブ林においてSLAM搭載バックパック型LiDARによるMobile Laser Scanning (MLS)と,RTK搭載UAV LiDARによるAerial Laser Scanning (ALS)の2種類の測量を行った.ALSの点群を元にMLSの点群の補正と合成を行った結果,ALSでは樹冠の重なりにより捉えることのできなかった地表面や樹木などのマングローブ林内の様相をMLSで補完し,数値標高モデルの補完を行うことができた.また,MLSの点群から樹木を個々に検出し位置情報と標高値を記録し,さらに樹種を目視で判別した結果,数千本単位のマングローブ樹種の3次元分布を把握することに成功した.得られた樹種の3次元分布や標高値の頻度分布,および過去の空中写真との比較から,マングローブ樹種は標高や立地環境によって棲み分けを行い,過去40年間にわたってその分布を変化させていることが示唆された.