日本語要旨

衛星リモートセンシングで捉えた東シベリア・レナーアルダン川中流域におけるサーモカルストに伴う地形沈降とポリゴン地形の発達

サーモカルストは、含氷率の高い永久凍土の融解によって進行する、不可逆的な地形変化である。東シベリアの中央ヤクーチアにあるレナ・アルダン川中流域では、過去30年の間に、特に集落の近辺で急速にサーモカルストが進行した。サーモカルストは近隣住民の生活に様々な影響を及ぼすにもかかわらず、それに伴う地形変化を広域的かつ定量的に調査する観測手法は皆無であった。本研究では、合成開口レーダー干渉法を用いて、いくつかの集落近傍のサーモカルストに伴う地表面変位を明らかにした。その結果、集落近傍の攪乱された地域(農地や耕作地)でより顕著な地形沈降が検出された。チュンギュリューとマイヤ地域における沈降量の大きさは、チュラプチャやアムガの沈降量よりも小さかった。さらに、高空間分解能の衛星光学画像を用いて、各集落近傍の耕作地におけるアイスウェッジポリゴンの空間密度を調べた。チュラプチャのポリゴン密度はマイヤのポリゴン密度よりかなり低かった。また、チュンギュリューとアムガにおける耕作地のポリゴン地形は不明瞭なものが多かった。衛星光学画像を用いた空間周波数解析では、発達の進んだポリゴンとそうでないポリゴンの間で、平均化されたスペクトルモデルに明らかな違いが見られた。これはポリゴン間(トラフ)の深さや植生の分布密度を反映していると考えられる。このように、衛星画像を用いた沈降マップとポリゴンの発達を表す統計量は、サーモカルストの発達の初期段階を評価するのに有用であると考えられる。