日本語要旨

異なるメタンハイドレート飽和率、間隙率、有効拘束圧、ひずみ速度を持つ天然及び人工ガスハイドレート含有堆積物の強度・変形特性に関する実験的評価

次世代資源として深海底に眠るガスハイドレート(主にメタンハイドレート)を安全に商業生産するためには、ガスハイドレートを含む堆積物力学特性を把握する必要がある。また、ガスハイドレートは地球規模の炭素循環に深くかかわっており、メタンの集積・分散メカニズムを解明するためにも、力学特性の把握は重要な課題といえる。これまで、人工的に生成したハイドレートを含む堆積物よび深海底より圧力コアリング技術を用いて採取した天然コア試料に対して、三軸圧縮試験および一軸圧縮試験を実施してきた。その結果,ハイドレート含有堆積物の強度には、ハイドレート飽和率、有効拘束圧、間隙率、ひずみ速度の4つの因子が関係していることが明らかにされている。しかし、これらの要因を統一的かつ定量的に評価した研究はなく、検層によりハイドレート貯留層の詳細な物性が分かっていても、強度予測は困難であった。本研究では、2018年4月に東部南海トラフにおいて、第二回海洋産出試験後に圧力コアリングにより天然コア試料を掘削・回収し、実験室に持ち帰った12本のコア試料に対して三軸圧縮試験または一軸圧縮試験を実施した。過去の試験結果と合わせた333条件から、ハイドレート含有堆積物の力学特性を明らかにし、圧縮強度と変形係数の経験式をハイドレート飽和率、有効拘束圧、間隙率、ひずみ速度の関数として提案した。得られた式は実験データとよく相関し、検層データを用いてハイドレート含有堆積物の強度・変形係数を予測可能であることが確認された。