多峰性粒度分布を複数の対数正規分布に分離する際の成分数推定に適した評価基準の検証
- Keywords:
- Polymodal grain-size distribution, Lognormal distribution fitting, Estimation criteria, Grain-size analysis
多峰性粒度分布を解析する手法の一つとして,いくつかの対数正規分布成分に分離して扱う場合があるが,いくつの成分に分けるかを決める方法については十分な検討がなされておらず,未だ適切な方法は確立されていない.この研究では,成分数を適切に推定するための評価基準について,真の成分数が既知である人工粒度データを用いて検証を行った.この研究では,先行研究で用いられてきた平均二乗誤差(MSE)に加え,赤池情報量規準(AIC),ベイズ情報量規準(BIC)および自由度調整済み決定係数(ARS)の計4種類の評価基準について比較し,それらによる成分数推定の特徴を調べた.その結果,MSEとARSは,成分数を過大推定しやすい傾向があり,真の成分数の増加による影響が小さかった.一方,AICとBICは成分数をやや過小推定する傾向があり,真の成分数が増加するにつれて正答率が低下した.また,他の評価基準に比べて,BICによって選択される上位のモデルには,正しい成分数の推定結果が含まれる傾向が見られた.この検証の結果,これまでしばしば用いられてきたMSEは,他の評価基準と比べて成分数の正答率が低く,粒度分布分離における成分数推定の評価基準として必ずしも最適とは言えないことが明らかになった.代わりの評価基準としてAICなどの使用がより適切であるが,それらを評価基準として選択された成分数について,BICによって上位に選択されているかを確認することにより,さらに正確な成分数の推定ができると考えられる.実際の粒度分布への適用例として,霞ヶ浦北浦の湖底堆積物の粒度分布にこれらの評価基準を用いた推定を行った結果,AICを基準として推定された成分数をBICを用いて確認することにより,粒度分布の特性の違いを反映していると考えられる成分数が推定された.