日本語要旨

ALOS及びSentinel-1によって検出された15年間の日本全国都市域の地表変動

現在では、干渉SAR時系列解析は広域の地表変動を監視するための主要なツールとなっている。2014年に打ち上げられたSentinel-1のSARデータは、定常的かつ高頻度に全球の大部分を網羅し、かつ、オープンフリーでデータが配布されていることにより、干渉SAR時系列解析を通じて、高精度かつ高空間分解能で全球の地表変動の計測と監視を可能にした。Sentinel-1以前にも、過去のSAR衛星によって観測されたデータセットがいくつか存在するが、それらの観測当時はデータの品質、解析技術、データポリシー、計算処理能力などの制約があったため、現在のような網羅的な地表変動監視は行われていなかった。しかし、2020年にはオープンソースの干渉SAR時系列解析ツール「LiCSBAS」が、2022年には産業技術総合研究所から大量のALOS干渉SARプロダクトがオープンフリーで公開されたため、これらを利用することにより、ALOSの運用期間である2006年から2011年までの地表変動を容易に導出することができるようになった。本研究では、これらALOS干渉SARプロダクト及びLiCSBASを利用して、2006年から2011年までの日本の主要都市域における地表変動の時系列と速度を算出した。さらに、Sentinel-1データによって検出された2014年から2020年までの地表変動(Morishita, 2021)と比較し、15年間の地表変動の推移を把握することを試みた。その結果、苫小牧市や新潟市では長期的に一定した地盤沈下が、弘前市、九十九里平野、金沢市、長野市松代では変動領域や変動速度の変化が、常総市、東京都代々木、京都市では地表変動の出現や消失がみられた。今後もさらに豊富なSARデータが継続的に取得されることにより、より長期的な地表変動の推移が明らかになり、変動メカニズムの解明や変動抑制への対策に役立てられるであろう。