周波数帯(0.003-1.0 Hz)地震波ノイズの分類学
- Keywords:
- Low-frequency seismic noise, Ocean–solid earth interaction, Wave–wave interaction, Quasi-static deformation
低周波数帯(0.003-1.0 Hz)の地震波ノイズを分析すると、主なノイズはPrimary Microseism(PM 0.05-0.07 Hz)、Secondary Microseism(SM 0.1-0.4 Hz)、Hum(Background oscillations, 0.003-0.015 Hz)である。PMの励起は遠地からの海洋波浪(Swell)と固体地球の海岸付近での相互作用(Direct interaction)、SMは海洋波浪どうしの非線形相互作用(Wave-wave interaction)、Humは海洋波浪どうしの非線形作用から生まれる海洋の長周期波と固体地球の相互作用(Direct Interaction)によること知られている。ただしこの3つ以外でも、短期的には(数時間から2−3週間)ノイズ源となるいろいろな現象が存在している。たとえば台風等の熱帯低気圧、ウェザーボム、ストームクエイク、竜巻などである。
これらの現象は励起のプロセスにより、大きく4つに分類することができる。海洋波浪と固体地球のDirect interaction(PM, Hum, ストームクエイク), 海洋波浪どうしのWave-wave interaction(SM,海上での熱帯低気圧、ウェザーボム)、地表での大気圧の急激な変化(竜巻、上陸後の熱帯低気圧)、ゆっくりとした気圧変化による荷重変形である。最後の荷重変形は地震波の励起というよりは準静的な変形である。この現象そのものは1970年ごろより知られているが、地震計のすぐそばに気圧計がなければ確認できないので、最近になるまで気づきにくかったと思われる。
SMの起源は近海なのか遠海なのか、という議論がさかんになったことがあるが、この周期帯(0.1-0.4 Hz)にはあらゆるところからのシグナルが来ているというのが答えである。なぜなら,通常は近海でのWave-wave interactionによる表面波の影響が大きいが、遠くの低気圧によって励起される実体波も存在していることがアレー解析で確認できる。将来的にこのアレー解析を突き詰めれば、遠海での海洋波浪の季節変化等をモニタリングすることも可能になると思われる。