日本語要旨

中新世以前の遠洋堆積物中はカリ長石に富んでいる

大気中のケイ酸塩ダストの鉱物組成は、大気中のダストと雲との相互作用を制御している。特にカリ長石は非常に高い氷晶核活性を示すため、その分布が地球の気候に長期的な影響を与えた可能性がある。しかし、過去の大気中の長石の長期的なアーカイブとしてどのようなものがあるかは分かっていない。

この研究では、遠洋の粘土試料を用いて、長石の鉱物組成、含有量、粒径を測定した。南鳥島周辺の堆積物については、約35 Ma以前の堆積物には10 wt%以上のカリ長石が含まれており、これは若い堆積物の5倍以上に相当する。これらのカリ長石の層序分布は他の火山性鉱物や地球化学的に推定された火山噴出物含有量変化とは異なっており、火山灰とは無関係であると考えられる。

カリ長石は孤立した粒子として存在するだけでなく、自然発生の擬菱面体微結晶としても観察された。一方で、微量のナトリウムを含んでおり、完全な自生起源ではない可能性がある。また、石英と長石の粒子サイズ分布は、北太平洋の他の地域と同様の層序的な変化を示し、カリ長石とダスト物質との関連性を示唆している。

南太平洋の堆積物でも、約44 Ma以前に斜長石に対してカリ長石が豊富に存在していることが確認された。これらの結果から、太平洋全体にわたり、30-40 Ma以前の堆積物においてカリ長石が豊富に存在している可能性が示唆される。