日本語要旨

温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2):ミッション概要

2009年に打ち上げられた温室効果ガスの観測に特化した最初の衛星である温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の後継機として、GOSAT-2が2018年10月に打ち上げられた。

GOSAT搭載センサーと比較して、GOSAT-2に搭載されたセンサーは、ほとんどの点で性能が向上しており、それに応じて観測データの質と量が向上することが期待されている。信号対雑音比(SNR)は、GOSAT-2のメインセンサーであるTANSO-FTS-2のSWIR帯域とTIR帯域の両方で改善されており、温室効果ガス濃度測定の精度が向上する。また、SWIR帯のSNRの改善により、信号強度が弱く観測データが得られなかった冬の北半球高緯度域でデータ取得の北限が北に移動し、より多くのデータが取得できることで、高緯度域における炭素循環研究の進展が期待される。一方、TIR帯のSNRの改善は顕著であり、特にCO2とCH4の鉛直濃度分布の分解能が大幅に向上している。GOSATにはなくGOSAT-2で初めて導入された機能に、TANSO-FTS-2のフィールドカメラを使用した雲域回避機能であるインテリジェントポインティングメカニズムが挙げられる。 この機能により、全球的に観測データ量が増加し、CO2排出量・吸収強度の推定精度が向上すると考えられる。 一般的に出現頻度が高い雲の種類は積雲であり、これをインテリジェントポインティングで効果的に回避できるため、特に熱帯ではその効果が大きいと期待される。TANSO-FTS-2のもう1つの大きな変更点は、一酸化炭素(CO)を測定するためにSWIRのバンド3の波長範囲が拡張されたことである。COは燃焼に由来する物質であるため、都市部での人間活動や野外でのバイオマス燃焼の影響を評価するために使用される。特に、ブラックカーボンタイプのエアロゾルに感度があるサブセンサーTANSO-CAI-2と、CO2とCOの測定をするTANSO-FTS-2とを組み合わせることで、バイオマス燃焼に伴う炭素収支を評価できることが期待されている。