海底下生命圏研究の今までとこれから:超貧栄養など極限環境試料中の微生物解析を可能とする技術と課題
- Keywords:
- Subseafloor biosphere, Low energy habitat, Technical developments, Limits of life
海底下の堆積物中に存在する微生物は、アクリジンオレンジなどの核酸染色剤による染色を行うことで可視化・検出されてきた。これらは現在でも利用可能な技術ではあるが、細胞濃度が減少する深部海底下や栄養に乏しい大洋中心部の海底下などに存在する微生物に対して、感度を上昇させるために新たな技術開発が行われてきた。その技術開発の成果は、深部海底下、生命圏の限界に近づく環境における微生物細胞の検出や、一億年前に形成した堆積物にも生きた微生物が存在していることを実証することにつながり、さらに最近では胞子状態の細胞が海底下深部に存在していることを明らかにすることにもつながった。一方で、DNAなどの分子生物学的解析は現在でも海底下深部において実現することが困難であるなどの課題も存在している。本レビューでは海底下の微生物生命圏を紐解くために実施されてきた技術開発の概要、そして分子生物学的解析など、海底下深部生命をよりよく理解するために必要とされつつも、現状で解決できていない課題等について概説する。