日本語要旨

海底地震計観測による日本海溝海側斜面で発生したM6クラス正断層地震の断層形状

2011年に発生したMw9.0の東北沖地震以降、日本海溝から海溝外側アウターライズにかけての海溝海側斜面では、複数のM7クラス地震を含むプレート内正断層地震が発生しており、大規模な地震や、それに伴う津波に対する懸念も生じている。海溝海側斜面で発生する正断層地震(アウターライズ地震)のいくつかでは、余震分布から複数の断層が本震時に破壊した可能性が考えられるが、それを明確に示した観測はこれまでほとんどない。2017年9月から2018年7月にかけて日本海溝中部の海溝海側斜面で実施された海底地震計(OBS)観測では、観測期間中にOBS近傍でM6クラス正断層地震が3回(2017年9月20日Mw 6.2、10月6日Mw 6.2、11月12日Mw 6.0)発生した。OBS観測によって得られた本震発生直後を含む詳細な震源分布や震源メカニズムに基づいて、これらのアウターライズ正断層地震の震源断層形状を検討した。2017年9月の地震では、傾斜角65°の高角な正断層が本震時に破壊した。本震時に破壊した断層とは直接関係しない余震活動も観測されたが、これらの本震断層面外の余震は、本震による応力変化で説明可能である。一方で、2017年10月と11月に発生した地震では、傾斜方向や傾斜角、走向の異なる複数の断層が本震時に破壊した可能性が考えられる。したがって、大規模なアウターライズ地震や、それに伴う津波を考える際には、複雑な断層形状を持つ断層モデルも考慮する必要がある。