陸面過程を計算する5km地域気候モデルによって評価された過去の日本の冬季の気候変化
- Keywords:
- Dynamical downscaling, regional climate model, JRA-55, global warming, extreme snowfall, snow cover change
格子間隔20km及び5kmの地域気候モデル(NHRCM)を用いて、気象庁55年長期再解析データ(JRA-55)の高解像度ダウンスケーリングを行い、1959年から2020年までの日本の地域気候変化を評価した。NHRCMには積雪を計算する陸面モデルが実装されており、日本全国における過去の積雪変化を評価することが可能である。本計算は年平均気温と年積算降水量の年々変動、および1980年以降の急激な気温上昇をよく再現できていた。東日本と西日本の日本海側の低標高域では、年最深積雪と年最大日降雪量に有意な減少トレンドが見られた。一方、東日本の高標高域では年最深積雪には有意な変化トレンドは見られず、年最大日降水量には有意な増加トレンドが見られた。北日本の日本海側では降雪変化の標高依存性がほとんど見られなかった。北日本の太平洋側では低標高域で有意な降雪減少トレンドが見られたが、高標高域では有意な変化は見られず、東日本の日本海側と同様に標高による違いが顕著であった。1961-1990年と1991-2020年の積雪日数の差を取ると、全国的に減少傾向が見られた。東日本の標高250m以下では約20%、西日本の標高50m以下の地域では約30%の積雪日数の減少が見られた。一方、北日本の標高500m以上や東日本の標高1000m以上の地域では、積雪日数の減少率が2%以下にとどまった。
北陸地方の平野部における年最大日降雪量(大雪)の過去の変化を調査した結果、大雪は日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)に関連して発生しており、平野部で大雪発生時に、山沿いでは降雪量の増加、沿岸部や海上では降雪量の減少トレンドが見られた。海上では有意な降雨量の増加が見られ、近年の温暖化によって降雪が降雨に変わってきていることを示唆している。この傾向は、地球温暖化に伴う将来の積雪及び降雪の変化予測の結果とも整合しており、地球温暖化の影響が既に顕在化しつつあることを示している。