海洋低次生態系モデルにより再現された黒潮続流域における表層と亜表層の植物プランクトン濃度の十年規模変動
- Keywords:
- Phytoplankton, Kuroshio Extension, Decadal variation, Ecosystem model, Eddy-resolving ocean, general circulation model
黒潮続流は、数年から十年の時間スケールで、流路が比較的安定していて直線的に流れる安定期と、流路が安定せずに蛇行しながら流れる不安定期の間を遷移することが知られている。このような変動は、黒潮続流域の生態系にも大きな影響を与えることが予想される。そこで、本研究では、北太平洋渦解像海洋モデルに組み込まれた低次生態系モデルの長期積分結果を用いて、黒潮続流域における植物プランクトン濃度の鉛直分布の十年規模変動について調べた。その結果、安定期には、流軸の南側で植物プランクトンが減少し、北側で増大する傾向があることが明らかになった。さらに、夏から秋にかけて、海面付近では、統計的に有意な植物プランクトン濃度偏差が見られなくなるが、亜表層には、水深60 m付近を中心に偏差が残り続けることも明らかになった。一方、不安定期には、安定期とは逆符号の偏差が見られた。栄養塩濃度偏差を解析することにより、その原因を探ったところ、安定期に黒潮続流の南側で植物プランクトンが減少するのは、沈降ロスビー波に伴い栄養塩躍層が深くなること、鉛直混合により供給される栄養塩が減少すること、黒潮続流の流軸の南側に存在する栄養塩に乏しい海水が北へ拡大することと関係することが示唆された。先行研究では、年平均値と春季ブルーム期の表層における植物プランクトン濃度の変動に主に着目していたが、本研究では、全ての季節について、表層だけではなく、亜表層の変動も含めて明らかにした点で新しい。