日本語要旨

スカイラジオメーターとMAX-DOAS観測によって検証されたMERRA-2再解析プロダクトを用いたインドシナ半島におけるバイオマスバーニングと人為起源エアロゾルの定量的評価

本研究では、バイオマスバーニング (BB) と人為起源エアロゾルの影響を毎年大きく受けるインドシナ半島 (ICP) において、再解析プロダクト (MERRA-2) を用いたエアロゾルの光学特性の定量評価を試みた。そのために、はじめにSKYNETピマイサイト (15.18°N、102.56°E)において、スカイラジオメーター観測から得られた光学的深さ (AOD) と光吸収のAOD (AAOD)、多軸差分吸収分光法 (MAX-DOAS) 観測から得られたエアロゾルの消散係数(AEC)データを用いてMERRA-2の精度検証を行った。乾季におけるMERRA-2のAOD、AAOD、AEC (0–1 km) は過小評価されており、相対平均バイアスはそれぞれ0.84、0.54、0.48であった。これらの過小評価は、地表付近の光吸収性エアロゾルのBBエミッションの不足に起因することが示唆された。次に2009年から2020年までのICPにおけるAODの時空間変動要因について解析を行った。その結果、AODの季節変動は、主に有機炭素(OC)と硫酸塩エアロゾルに支配されていることが明らかとなった。OC AODはBB活動期(1–3月)に卓越していたが、硫酸塩のAODは一年中高く、全体の25%以上を占めていた。北東ICPの硫酸塩AODは10 月に全AODの約74%を占め、中国南部からの硫酸塩エアロゾルの輸送の影響が顕著であることがわかった。期間中の北東ICPと南ICPのAODはそれぞれ-4.40%、-3.00% year-1で減少傾向を示し、中国南部と北東ICPの二酸化硫黄濃度エミッションの減少に対応していた。したがって、BB活動期にはOC AODが支配的であったが、2009-2020年を通してICPの大気環境には中国南部からの人為起源エアロゾルが大きく寄与していることが明らかとなった。