日本語要旨

ホットプレス法による曹長石緻密多結晶体の合成

地球内部の理解に向けた岩石の物性計測では、合成した岩石が用いられることが多い。上部及び中部地殻の現象を理解する場合には、Na に富む斜長石の緻密多結晶体が必要となる。このために、この論文では低空隙率で、均質な微細構造を有し、メルトを含まない、1 cm3 を超える緻密な曹長石多結晶体を固体焼結によるホットプレス法により合成する方法を模索した。この研究の中で、材料粉末の粒子サイズ、材料粉末の凝集状態、成形方法、ホットプレス時の温度、圧力、時間を変えた複数の実験を行った。材料粉末の粒子サイズについては、天然曹長石粉末をさらに粉砕し水簸を行うことにより、2ミクロン未満と数100 nm 未満の二種類の粉末を用意した。細粒なアルバイト粉末は凝集しやすいため、材料粉末を分散させて乾燥させるための方法も開発した。ホットプレスは 1000から1150℃、圧力40から120 MPa の範囲で行った。以上の実験から、(1) 数 100 nm 未満の材料粉末の粒子サイズ、(2) 十分な材料粉末の分散、(3) 鋳込みによる成形が、ホットプレスにより緻密多結晶体を効率的に行う上で重要な点としてあげられる。以上を踏まえた上で、温度 1080℃、圧力 100 MPa の条件でホットプレスを行うことにより、緻密な曹長石多結晶体を得ることができる。