東南海・南海地震震源域における地震活動分布とプレート間固着およびスロー地震との関係
- Keywords:
- Nankai Trough subduction zone, Seismicity, Seismic velocity structure, Philippine Sea Plate, Interplate coupling, Slow earthquakes
東南海・南海地震震源域が存在する紀伊半島沖において、地震波速度構造不均質とプレート境界地震の時空間分布を評価するために、地震波トモグラフィーを実施した。ケーブル型海底地震観測網(DONET)のデータを用いて、微小地震の検出を行い、解析に活用した。得られた速度構造モデルには、潮岬直下の高速度帯、室戸岬沖の沈み込む海山、沈み込む古銭州海嶺という主要構造がイメージングされており、これらの存在を報告した過去の2次元人工地震探査結果と整合的である。また、室戸岬沖と同等以上のスケールを持つ沈み込む海山が、紀伊水道下には存在しないことも確認された。一方で、プレート間の固着が強い領域と上盤側プレートの高速度域との間に単純な関係は見られなかった。震源決定結果からは、通常地震が上部プレートからスラブ内まで広く分布し、最も活発な領域は2004年紀伊半島沖地震の余震域の海洋性地殻であることがわかった。また、本研究の結果は、気象庁による結果に比べて、地震の検知能力および震源深さの推定精度が大幅に向上している。このうちプレート境界における地震活動に着目し、14箇所の活動域を特定した。これらの活動域は主にプレート境界に沿った地震発生帯温度(150〜350℃)の範囲に分布し、プレート間固着が強い領域の外側に位置する。いくつかのプレート境界地震の活動領域は、スロースリップ発生期間中に群発的な活動を示し、中には浅部超低周波地震を伴うものもあった。このことは、プレート境界における強い固着域の周囲において、スロースリップに連動して通常地震が活発化したことを示す。通常地震は、スロー地震よりも正確な震源位置の特定が可能であり、より小さなマグニチュードのイベントを検出できる。このため、本研究のようなプレート境界における通常地震のモニタリングを推進することにより、プレート境界上の固着すべり状態のより詳細な時空間的変動が明らかになると思われる。