自発的周期的背弧拡大の可能なメカニズム
- Keywords:
- cyclic back-arc spreading, subduction dynamics, 660 km boundary, numerical model, stress, the Tonga-Kermadec arc, the Calabrian arc
トンガ弧の南フィジー海盆とラウ海盆やマリアナ弧のパレスベラ海盆とマリアナトラフの周期的な拡大に見られるように、背弧拡大は非定常的な過程である。これらの背弧拡大は、火山弧でのリフティングに始まり、典型的な背弧拡大に移行する。本研究で示した、深さ410 kmと660 kmの相転移を含むプレート沈み込みの2次元数値モデルの結果は、低粘性かつ低密度のマントルウェッジの存在が、島弧でリフティングが発生するための重要な条件であることを示唆している。ほぼ鉛直に傾斜するスラブが660 km不連続面に衝突したときに、傾斜方向の圧縮応力がスラブに沿って上方に伝わり、島弧域に引張応力が生じることにより背弧拡大が始まる。背弧拡大に伴う海溝の後退によって、スラブの傾斜が減少しスラブが座屈する。このスラブの座屈によって背弧拡大は停止する。座屈したスラブのほぼ鉛直に傾斜した踵が再び660 km境界に衝突したときに、リフティングが再び始まる。この2回目のリフティングは島弧で始まるが、次第に背弧域に移動し、新しい背弧拡大となる。我々のモデルでは、スラブの曲げに対して中程度の抵抗力をもつ、厚く(年齢が古く)弱い(降伏応力が小さい)スラブの沈み込みが周期的な背弧拡大になることが予測される。対照的に、曲げに対する抵抗力が大きい厚くて強いスラブでは連続的な背弧拡大が予測され、曲げに対する抵抗力が小さい(薄い)スラブでは背弧拡大が起こらないと予測される。スラブ端の側方を回り込むマントルの流れ、浮揚性リソスフェアの衝突、第三のプレートとの相互作用などの過程が、特定の状況での周期的背弧拡大に重要な役割を果たす可能性がある。しかし、約2000万年という共通する時間スケールの存在は、すべてではないにしても多くの沈み込み帯に共通する普遍的なメカニズムが背弧海盆形成に寄与していることを示唆している。本論文の新しいモデルは、トンガ-ケルマデック弧とカラブリア弧に見られる周期的な背弧拡大の主要な特徴を説明することができる。