日本語要旨

BCC鉄の衝撃組織の再現実験:鉄隕石への適用

鉄隕石のカマサイト(Fe–Ni合金)の変形双晶であるノイマンバンドは,鉄隕石の母体形成初期の衝突を示す特徴的な組織である.この論文では,BCC鉄に対して室温,670 K,および1100 Kの温度において,速度1.5 km/sで衝突回収実験を行い,さらに衝突回収した鉄に対してアニーリング実験を行った.また,iSALE-2Dコードを使用して数値シミュレーションを行い,衝突時の鉄の標的のピーク圧力とピーク温度の分布を明らかにした.これらの衝突実験と数値計算にもとづいて,双晶(ノイマンバンド)の生成と消失に対する圧力と温度の影響を明らかにした.双晶は,室温および670 Kで実施された衝突実験の生成物において確認されたが,1100 Kにおける衝突実験の回収試料では観察されなかった.以上の結果から,鉄の変形双晶は1.5〜2GPaから約13GPaまでの衝撃によって形成され,この双晶は1070 Kでのアニーリングによって消失することが明らかになった.本研究によって,ノイマンバンドを持つ鉄隕石は,少なくとも670 Kまでの温度で1.5〜2GPaから約13GPaの衝撃を受けたものであり,この鉄隕石はノイマンバンド形成後1070 K以上の温度には加熱されなかったことが明らかになった.