高・低流領域プレーンベッドの定義の再検討
- Keywords:
- Plane bed, suspended load, bed-load, bedform
地層中の堆積構造は,過去の地質学的イベントの情報を復元する鍵となる.プレーンベッドによって形成される平行葉理は最も一般的な堆積構造の一つで,混濁流堆積物中にも観察される.既存研究により,高流領域および低流領域の2種類のプレーンベッドが知られている.しかし,それら2種類のプレーンベッドが形成される水理条件についてはまだ議論が続いている.そこで,本研究は,既存の観測結果を基にプレーンベッドの形成安定領域図を作成し,2種類のプレーンベッドが形成される水理条件を調べた.その結果,(1)プレーンベッドの形成条件が2つの異なる領域にプロットされることを確認し,(2)両者の形成安定領域の境界は浮遊砂の発生境界と対応することを明らかにした.すなわち,本研究は高流領域プレーンベッドが浮遊砂を伴う流れで形成されることを示した.一方,低流領域プレーンベッドは堆積物が掃流砂としてのみ移動するときに形成されることが明らかとなった.さらに,従来は0.7 mm以上の粒径でしか形成されないと考えられていた低流領域プレーンベッドが,細粒砂~礫サイズの粒径で形成されることが示された.このことは,堆積物の粒径が細かく剪断応力が小さい流れでもプレーンベッドを形成しうることを示している.この結果を受けて,バウマシーケンスのTd部のような細粒砂岩中の平行葉理の成因に関する従来の解釈は見直される必要があるだろう.本研究で作成したベッドフォーム形成安定領域図は,地層中に残るイベント堆積物から古流速などの水理条件を見積もるのに有用と考えられる.