日本語要旨

地上観測網と MAX-DOAS 法およびキロメートルスケール大気環境モデリングによる首都圏の地上・上層の NO2 汚染

地上の NO2 濃度は地上観測網から把握されているが,地上よりも上層,特に大気境界層内の NO2 汚染状況の理解は今まで限定的であった.本研究では千葉県内の地上観測網,千葉大学設置の多軸差分吸収分光法(MAX-DOAS 法)による上層(0〜1 km)のNO2 計測,さらにキロメートルスケール(1.3 km)の空間解像度を有する大気環境モデリングから,首都圏の地上・上層の NO2 汚染状況を解明することに迫った.

研究対象は 2015 年秋季の集中観測期間(2015 年 11 月 9〜23 日;千葉キャンペーン2015)とした.モデルはキャンペーン期間中の地上・上層の NO2 濃度の空間分布や時間変化だけでなく,夜間に高く,日中に低くなる日内変動もおよそ捉えることができていた.期間中に観測された高濃度NO2 は,夜間に高くなるケースと,日中に濃度低下せずに高濃度となるケースの 2 つの場合があった.いずれも風が停滞した気象場が要因として考えられたが,後者については,曇天下で境界層高度が低いことも影響していた.日平均し たモデル結果をもとに,地上・上層の NO2 濃度の対応関係を見てみると,両者は強い相関関係をもっており,清浄日(地上観測値で 5 ppbv 前後)や汚染日(同 15 ppbv 前後)を問わず,上層 NO2 濃度は地上 NO2 濃度の 0.4〜0.5 倍に相当することが示された.時刻別に同様の解析を行うと,その対応値は日中に高く,夜間に低いことが示された.地上 観測網と MAX-DOAS 法,大気環境モデリングを連携した本研究を通じて,首都圏の地上・上層の NO2 汚染の対応関係が明らかとなった.