航空機を利用した中緯度帯における夜光雲観測
- Keywords:
- Noctilucent cloud, mesosphere, middle latitudes, global warming, airline, aircraft
夜光雲は地球上で最も高高度(高度85km)に発生する雲として知られている。夜光雲は極域において夏至を中心とした2か月程度の期間に発生する現象である。近年、この夜光雲が中緯度地域でも頻繁に観測されるようになり、地球大気環境のグローバルな変動との関連が注目されている。特に、全球大気モデルによれば、温室効果ガスの全球的な増加により、地上で地球温暖化が進行すると、超高層大気は逆に寒冷化することが示されていることから、夜光雲の発生領域も地球温暖化の進行に伴って拡大する可能性がある。このことを検証するためには、中緯度における夜光雲の出現分布および頻度を正確に把握することが重要になる。しかし、既存の地上観測網は極域側に集中しており、極軌道衛星による観測も中緯度帯でのサンプリングが十分ではない。さらに、夜光雲観測の主力となっている地上観測は、地上気象に観測の成否が左右されるデメリットもある。そこで、本研究では日本発着の定期航空便を用いた中緯度夜光雲のイメージング観測を試験的に実施し、その有効性を検証した。観測は全日本空輸(ANA)の協力を得て、日本と欧州およびアメリカを結ぶ航路を持つ定期便のうち、飛行時間帯およびルートから夜光雲の検出が期待できるフライトを複数選定し、計13のフライトで実施した。その結果、8のフライトで夜光雲を緯度55度以下の中緯度帯から検出することに成功した。夜光雲が観測された時刻、位置の情報を米国の夜光雲観測衛星AIMのデータと比較したところ、航空機観測は衛星観測の空白域において夜光雲を捉えていることが確認された。今回は試験観測であったため、特定の便すべて(=毎日)において観測を実施したわけではないが、特に長時間夜光雲の検出が可能である便で毎日観測を実施すれば、衛星観測だけでは不可能であった中緯度における夜光雲の連続監視が実現可能であることが示された。