日本語要旨

サンフォトメータ観測のための相関k分布法による940 nm気体吸収帯の高速・高精度な狭帯域放射輝度計算

地上設置型の角度走査型放射計のデータ解析における940 nm(10,000〜10,900 cm-1)付近の水蒸気吸収領域の狭帯域放射を効率的に計算するために、相関k分布法のルックアップテーブル(WV-CKD)を開発した。波長分解能が異なる3種類(2、5、10 cm-1)のテーブルを作成し、地上における10 cm-1サブバンドの放射輝度の精度が0.5%以下になるよう積分点と積分点数を最適化した。高分解能のWV-CKDには多くの積分点を必要とするが、2 cm-1分解能のWV-CKDを用いると、line-by-line法と比較して放射計算の実行回数が約1/46に削減された。 さらに、いくつかの数値実験により、WV-CKDがさまざまな垂直プロファイルの大気における放射輝度の計算に適用可能であることを確認した。WV-CKDを使用して計算した半値全幅(FWHM)が10 nmで畳み込まれた直達日射量と拡散日射量の精度は0.3%未満であった。また、WV-CKDで計算されたFWHMが10 nmの規格化放射輝度(直達光照度と拡散放射輝度の比)の精度は0.11%以下であり、地上設置型の角度走査型放射計の観測の不確実性(約0.5%)よりも小さい。最後に、SKYMAPおよびDSRADアルゴリズム(Momoi et al., 2020)をSKYNET観測(千葉、日本)に適用し、マイクロ波放射計による可降水量(PWV)と比較した。 WV-CKDで得られたPWV(γ= 0.995、傾き: 1.002)は、Momoi et al. (2020)で用いた以前のテーブルによるPWV(相関係数: γ= 0.984、傾き: 0.926)よりも観測値との良い一致を示した。WV-CKDを実際のデータに適用することにより、地上設置型の放射計からPWVを推定するためには正確なテーブルが不可欠であることがわかった。