日本語要旨

天然及び実験による高圧・衝撃で生成する地球及び地球外物質

秒速数キロを超える超高速での衝突は太陽系の進化過程において普遍的に起きている現象であり,瞬間的な超高圧・高温状態が発生する点で特徴づけられる。そのような極限環境下では,天体の構成要素である岩石や鉱物などに様々な物理的・化学的変化が起きる。構成要素の1つである鉱物は,極限環境下でより高密度な物質である高圧相に変化する。その高圧相は地球深部の構成物質とも考えられている。そのため,高圧相の結晶構造,安定圧力・温度領域,相転移メカニズムを解明するため,高圧・高温発生装置を用いた実験が長年行われてきている。一方,天然の高圧相(高圧鉱物)は,超高速衝突を経験した地球や地球外の岩石から見つかっている。鉱物学者や惑星科学者は隕石や地球のクレーター近傍の岩石に含まれる高圧鉱物を半世紀以上にわたり研究してきた。このレビュー論文では,まず高圧相を作り出す実験に関して簡単に紹介し,次に,隕石と地球のクレーター近傍の岩石に含まれる高圧鉱物に関する研究史を解説する。最後に,高圧鉱物から読み解くことができる超高速衝突現象の様々なパラメーターについて触れる。