日本語要旨

格子ボルツマン法を用いた雪の吹きだまりモデルの開発

風が強い積雪地域では,吹雪に伴う吹きだまりから道路を守るために,道路の風上に防雪柵が設置されている.本研究では,防雪柵まわりに形成される吹きだまりの高さ分布を評価するために吹きだまりモデルを開発した.開発したモデルは,格子ボルツマン法を用いた数値流体計算モジュールと,先行研究の手法を用いて雪粒子の運動と堆積を計算する雪粒子モジュールから構成される.実験設定の計算領域は,free-slip境界条件の天井とnon-slip境界条件の底面から成るハーフチャネルである.流入境界条件は人工的に作成した対数則に従う流入変動風である.フェンスなし実験(対照実験),長さ無限のフェンス実験,長さ有限のフェンス実験の3つの実験を行った.フェンスは,その面が主風向に直交し,中心が計算領域の中心に一致するように設置した.風のシミュレーションの結果,長さ無限のフェンスまわりではフェンス上端で強風が発生し,フェンスの風下で鉛直方向の渦が発生した.一方,長さが有限のフェンスの風下では,鉛直方向だけでなく水平方向にも渦が発生し,フェンス上端の強風が長さ無限のフェンスの上端に比べて弱くなった.吹きだまりの計算の結果,長さ無限のフェンスまわりでは,ほとんどの吹きだまりが風上で形成され,風下ではほとんど吹きだまりは形成されなかった.しかし,長さ有限のフェンスまわりでは,風上だけでなく,風下にも吹きだまりが形成された.これは,フェンスの端から剥離した水平渦に沿って雪粒子が移動し堆積したからである.今後,開発したモデルを様々な形状のフェンスに適用し,吹きだまりの形状を系統的に分析するために,雪粒子の再飛散や風と雪粒子の相互作用などを計算に加える必要がある.