日本語要旨

地球気候における太陽と中層大気/熱圏/電離圏の役割(ROSMIC):これまでの進展と今後の展開

太陽からのエネルギー流入(地球の主要なエネルギー源)に関する知識は太陽地球系システムを理解するうえで重要であるが、同様に重要なのは、地球がこのエネルギーを受け入れ、再放出することでどのように準平衡状態を実現するかを知ることである。ROSMICプロジェクト(2014-2018年を含む)は、SCOSTEP(太陽地球系物理学科学委員会)のVariability of the Sun and Its Terrestrial Impact (VarSITI)プログラムの1構成要素として、太陽地球系システムにおける地球側の研究を支援してきた。ROSMICの下には、気候に対する太陽活動の影響、力学的大気上下結合、MLT(中間圏/下部熱圏)の気候トレンド、および熱圏における気候トレンドと太陽活動の影響という4つのテーマが設定されている。VarSITIプログラムの実施中、4つのテーマすべてにおいて科学的な進展がみられた。これには、(1)光化学的に生成された化学種の熱圏から下層大気への輸送、(2)下層大気で生成された大気波動が上方に伝播して中間圏/熱圏/電離圏の風速や力学的変動、微量成分の輸送に影響するメカニズム、(3)MLTにおける長期的気候トレンドの特徴、および(4)熱圏で起こっている気候トレンドおよび構造的変化、に関する理解の向上が含まれる。ここでは、過去5年間のこれら4つの分野における進展をレビューし、今後予想されるこれらの分野における研究の方向性を要約する。また、太陽地球系システムの中の地球側の構造を維持するために必要な物理的要素についても記述する。今後の地球上での人間活動を維持・発展させていくためには、地球大気の変化(例えば、人為的影響の結果として現在発生している変化)や想定される太陽活動の変動が太陽地球系システムに与える影響を理解する必要がある。