日本語要旨

地球放射線帯のダイナミクス:SCOSTEP/VarSITI期間における研究の進展

地球の周辺の宇宙空間において、地球の固有磁場が支配的な領域は磁気圏と呼ばれている。この磁気圏において地球に比較的近い領域、おおよそ静止軌道よりも内側の領域は内部磁気圏と呼ばれ、磁気圏で最も冷たいプラズマ(~1 eV以下)からもっともエネルギーが高い放射線帯粒子(MeV以上)まで6桁以上にわたるエネルギー帯のプラズマ・粒子が共存している。これらのプラズマ粒子は、内部磁気圏に存在する様々な種類のプラズマ波動との波動粒子相互作用を通した「エネルギー階層間結合」によって、ダイナミックに変化している。

SCOSTEP(Scientific Committee on Solar-Terrestrial Physics: 太陽地球系物理学科学委員会)は2014-2018年にVarSITI(Variability of the Sun and its terrestrial impact: 太陽活動変動とその地球への影響)プログラムを実施し、太陽活動変動とその地球への影響に焦点をあてた研究プログラムを展開した。その中で、SPeCIMEN(Specification and Prediction of the Coupled Inner-Magnetospheric Environment:内部磁気圏におけるカップリング過程の理解と予測)と呼ばれる内部磁気圏に焦点をあてた研究プログラムが行われた。2010年代は、NASA/Van Allen ProbesやJAXA/あらせ衛星などの新しい科学衛星による観測、地上ネットワーク観測の進展、さらには先端的なシミュレーションによって、内部磁気圏の理解が大きく進んだ。本論文では、内部磁気圏のダイナミクスのうち、特に放射線帯についてVarSITI実施期間における研究の進捗を紹介するとともに、残された課題と将来の研究の動向についても論じる。