地震カタログの不均質性の可視化:モデリング・分析・補正
- Keywords:
- ABIC, Bias compensation, Detection rate function, Empirical Bayesian method, Data heterogeneity, Hypocenter catalogs, Location corrections, MAP solutions, Magnitude-shift, Smoothness constraints
地震計や観測網が時代とともに発展するため,検出される地震の数は時と共に増えている。一方,海岸から沖合に向かって距離が増すにつれて,小地震の検出率は減少する。地震の大きさ(マグニチュード)の定義も地震カタログ(震源データ)によって様々であり,地震計の種類や地震波の測り方で異なる。この様に,長期間にわたる地震カタログは均質でない。また,大地震の直後には余震が多発するが,地震計記録の波形が互いに重なり合い,検出されず位置が特定されない地震が多く,それらの震源決定を行うことは困難である。
このように地震カタログの不均質性は不可避であるが,様々な不均質性のうち,何が原因で偏った地震活動研究の結論が導かれるか知る必要がある。したがって,地震カタログの不均質性を明らかにし必要な補正をすることは,統計地震学における研究の基礎である。このレビューでは,さまざまな系統的誤差を明らかにするためのモデルを使った解析方法を紹介する。具体的には,(1)震源カタログの地震マグニチュード決定に非定常なバイアスがあるかどうかを調べる,(2)時間や位置とともに変化する地震の検出率関数を確立することにより,実際の地震活動度と観測に起因するカタログの時空間的不均一性を区別する,(3)観測ネットワークから離れた場所での震源位置の偏りを,他のカタログとの震源位置比較により補正する,などである。
これらは経験的なベイズ法により求め,補正によって改良できた実際の例を幾つか提示する。また,地震カタログ内の系統的誤差や,異なる地震カタログによる,地震活動の異常変化について異なった結論を示した例を示す。とくに地震活動の変化についての様々な誤解を招く解析結果の例を提示する。これには,19世紀後半から20世紀初頭の大地震の世界的なカタログに,人為的なマグニチュードシフトを引き起こした問題が含まれている。