30mDEMを用いた日本の沖積平野と山地の地盤脆弱性のアセスメントに資する地形分類
- Keywords:
- Classification of topography, Terrain classification, Geomorphological map, Digital Elevation Model, Topographic measurement, Height Above the Nearest Drainage, Alluvial plain, Landslide
我が国は自然災害が多く、毎年のように地震・台風等による被害が報告されている。本研究は、地形学的分類と地質工学的分類を大きな矛盾なく両立させ、沖積平野から山地に至る多様な斜面について地盤脆弱性を反映した地形分類を実現することを目指し、数値標高モデル(DEM)を用いた日本全国の地形分類を行ったものである。手法は、既存のDEMベースの地形分類手法を改良したシンプルで再現性のある教師無し分類とし、基盤地図情報を元にした30mDEMを適用した。このような垂直精度の高いDEMを用いて地形量を計算する場合、人工的な凹凸やノイズの増幅が問題となるが、大きなノイズは検出しないようにチューニングを行った。手法の概要は以下の通りである。
1)DEMを用いた地形計測によるラスタ画像の生成:先行研究で用いた斜面勾配、尾根谷密度(Surface texture)、凸部の分布密度(Local convexity)に加えて、最寄り落水線からの比高( Height Above the Nearest Drainage : HAND)のラスタ画像を作成。
2)斜面の領域分割(セグメンテーション)による地形ユニットのポリゴン作成:斜面勾配とHANDのラスタデータを用いて斜面を領域分割し、ポリゴンデータを作成。
3)各領域内の地形量の代表値を用いたクラスタリングと補足的な分類:ポリゴンデータを、斜面勾配・HAND・尾根谷密度を用いて40クラスタに分類。
4) クラスタのグルーピングと補足的な分類:クラスタ収束値について、尾根谷密度-HANDの散布図上での位置が隣接している事という縛りをかけた上で、既存の地質図・地形分類図・崩壊分布図との定量的な比較を行いグルーピング。一部、凸部の分布密度による補足的な再分類を凡例上で行うとともに、HANDが水面高に近い領域を別途独立した凡例とし、16の凡例(地形種)に取りまとめ。
本研究で作成した地形分類データは、DEMを用いた先行研究と比較して、人工改変地の多い都市の平野部で微地形の分類が大きく改善しているほか、HANDの導入によって低位段丘や自然堤防の抽出精度が向上した。HANDが水面高に近い領域は、洪水が滞留する領域を把握するのに役立つ可能性が示された。また、従来全国レベルの分類が行われてこなかった山地について、表層崩壊がよく見られる地形、周辺の岩相が異なる谷地形の識別など、斜面災害等の研究に役立つ中分類ができたほか、火山地と一般山地の尾根~平野部に至る地形種の並びの違いを明らかにした。まだ領域分割等に改善の余地がある他、人工改変地の影響が取り切れていないが、写真判読による既存の地形分類図と一定程度の類似性を示し、全体的には満足のいく結果が得られた。さらに、カリフォルニア州での30mDEMを用いた試行結果から、この手法が海外の他の地域でも有効であることが示された。このような地形を定量的にゾーニングしたデータによって、地形との相関関係が知られている様々な計測値の補間やマッピングが可能になると期待される。
※本研究で作成された地形分類図の閲覧、GeoTIFF、工程3)までの中間成果を含むポリゴンデータのダウンロードは下記のURLからできる。