気候学際研究モデル(MIROC)を中心とした地球システムモデリングの20年
- Keywords:
- 地球システムモデル, 気候変動, IPCC, 炭素循環, 生物地球化学, 学際的プロジェクト, 残余カーボンバジェット, 社会経済学, 窒素, 鉄
本論文では,日本で開発されたMIROC(気候学際研究モデル)に基づく地球システムモデル(ESM)の成果を中心に、過去20年間のESMによる研究を概観する。ESMとは、炭素循環などの生物地球化学的プロセスを組み込んだ気候モデルである。ESMの開発は、気候変動と炭素循環のフィードバックの研究が契機となっている。最新のESMは、初期のESMに比べてはるかに現実的なものとなっており、大気化学や窒素・鉄の循環、大気中のダストや河川による栄養塩の輸送など、炭素以外の様々な生物地球化学的プロセスが含まれるようになっている。ESMは気候変動緩和目標に見合った二酸化炭素排出量の評価など、多くの実用的な課題に利用され、気候変動緩和政策の立案には欠かせないツールといえる。また、社会経済と地球システムの結合系の研究や、炭素循環の10年規模予測など、ESMを利用した新たな野心的な取り組みも進んでいる。ESMの改良のためには、気候科学に関する様々な分野を統合する活動をさらに推し進める必要がある。ESMの新たな応用は有意義な洞察をもたらす可能性があり、気候科学以外の分野、例えば社会経済学分野との連携を拡大することを指向すべきである。