全球土砂動態モデルの開発
- Keywords:
- Global sediment dynamics, Suspended sediment flow, Amazon River basin, Oceania
土砂動態は地球システムモデリングの諸要素において重要な役割を担っているが、これまで開発されてきた全球スケールの土砂動態モデルは月/年単位など長いタイムスケールが対象のものや観測データに大きく依存するものがほとんどである。そこで、本論文では全球河川氾濫モデルCaMa-Floodに土砂の輸送過程や巻上沈降過程を導入することにより全球土砂動態モデルの構築を行った。モデルにより出力される浮遊砂輸送量の検証のために世界中から4000地点以上の観測データを収集し、本論文の対象期間内のサンプル数や上流域面積等の複数の条件を満たす61地点について検証を行った。特に重点的に検証を行ったアマゾン川流域の最下流に位置するObidos観測所では浮遊砂輸送量の季節変動はよく再現できており(R=0.66)、海洋への浮遊砂輸送量が世界有数のアマゾン川流域において季節変動やピークのタイミングをモデルで捉えることができる。その他の流域の観測地点における季節変動や年間合計量の空間分布も比較的再現することができているが、陸域から海洋へと輸送される浮遊砂の全球合計値がモデル出力では約4Bt/aであり既往研究で報告されている約13.5-22Bt/aと比較すると大幅に過小評価されていた。この過小評価の緩和には河道への土砂の供給源である陸域の土砂生産過程が降水量と斜面勾配のみの関数である点などモデル改良も必要だが、元となる観測データの対象期間やデータ不足を補うための空間外挿に大きく影響される既往研究の全球推計値の妥当性も検討する必要があることを示した。本論文で新しく構築された土砂動態モデルは全球スケールでの土砂の動きのさらなる理解に資することができ、海洋モデリングや自然災害等の関連分野への応用も期待される。