日本語要旨

核―マントル結合系の進化:レビューと将来展望について

本レビューでは、特に地磁気観測データならびに古地磁気データ解析による長期間磁気変動過程(地磁気永年変化)と、それにまつわる地球深部の諸現象(内核の生成・成長)を説明することを目的とした、核―マントル結合系による進化過程に関する研究の現状と将来展望について議論している.核―マントル結合系の進化過程にとって、最も本質的な物理量はマントル深部構造が色濃く反映された核―マントル間における熱流量であり、これまでの研究では、この物理量を用いて、過去40億年以上にわたる中心核が担っている磁気進化のシナリオを提唱してきた.しかしながら、核―マントル結合系の進化の結果として説明される諸現象の十分な説明(内核の年齢や地磁気極逆転周期)にはまだ程遠く、現在も様々な進化シナリオが様々な研究アプローチから提唱されている.さらに、最近の地震波解析からは、核―マントル境界直下の核側に低速度構造が発見されており、この構造が核―マントル結合系の進化過程の解明をさらに複雑にしている.

核―マントル結合系の進化過程の解明は、様々な困難がついてまわる.しかし、最近の様々な研究者の努力によって徐々に解明が進み、長期間磁気変動過程が地球深部の変動と深く関連していることが明らかになってきている.今後の展望として、以下の2点を指摘する.

1.地球形成過程との関連を取り入れることで、進化過程の初期条件(マグマオーシャンの固化の影響やいつプレートテクトニクスが開始されたのか?)の影響を解明し、惑星形成論と固体地球物理学との融合させた研究の展開を行う必要がある.

2.地球を取り巻く磁場は、我々生命体を太陽からの有害な放射線や大気の剥ぎ取りに対する盾の役割をしているため、地球深部過程と表層環境の長期間進化にはなんらかの関連性があると考えられる.その関連性を解明することで、地球が多圏相互作用系の結果として「生存可能な惑星」として位置付けられる理由の追求のきっかけを作るために、古環境変動―固体地球物理学の融合研究の発展が今後重要なポイントとなる.