X-ray CTと3Dモデリングから明らかになったコア試料中の厚歯二枚貝(白亜系セノマニアン階)の産状
- Keywords:
- X-ray CT, Surface rendering, Volume rendering, 3D modeling, Rudists, Abu Dhabi, Cretaceous
中東における白亜系炭酸塩岩の油田の貯留岩層の多くは、厚歯二枚貝を豊富に含む堆積相から構成される。厚歯二枚貝は、後期ジュラ紀に出現し、白亜紀中頃から白亜紀末にかけて繁栄した二枚貝の一グループである。厚歯二枚貝は特徴的な形状を示す殻を有しており、露頭において,種の同定のほか、その堆積様式を確認することができるが、ボーリングコア試料では種の同定などは難しい。今回、コアのX線CTスキャン、3Dモデリングを実施することによって、コア中の厚歯二枚貝の産状(殻の形状、分布、保存状態)およびタクサを検討した。
使用したコア試料は、アブダビ海上に位置するA油田の上部白亜系セノマニアン階から得られた。使用したコアは、7インチコアを3分割スライスした半円形(長さ8㎝、幅7cm、奥行き2cm)である。このコア試料について、①表面観察、②X線CTスキャンによる内部観察、③X線CTスキャンデータを用いた3Dモデリング(サーフェスレンダリング、ボリュームレンダリング)、④サーフェスレンダリングデータを用いた3Dレジンモデルの作成を行った。
コア表面の観察では7個体が認められるのみであったが、②〜④を行うことにより10個体の厚歯二枚貝を観察することができた。10個体は4つのタイプ(①厚い殻を持つRadiolitidae α、② 厚い殻をもつRadiolitidae β、③大型のRadiolitidae γ、④Ichthyosarcolites)に分類され,それらの形状,コア試料内における分布,個体間の関係を図1に示すように可視化することができた。Radiolitidae αに分類される1個体については、その成長の過程が把握された。
このようにして得られる厚歯二枚貝の個体の産状やタクサに関する情報は、堆積環境の推定に有用である。厚歯二枚貝を含有する堆積相が中東の多くの石油・ガスの貯留層になっていることから、今回のスタディの結果は、同貯留層の形成・発達過程の考察に新たな情報をもたらし,石油・ガスの探鉱に貢献すると期待される。