日本語要旨

1.5度、2度、4度全球気温が上昇した場合の日本周辺における気候変化のスケーラビリティ

地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)のサブセットとして、世界平均気温が産業革命以前と比べ1.5度上昇した将来気候の大規模アンサンブル計算を行った。すでに計算されている現在気候の地域気候モデル(NHRCM20)出力について再現性を確認し、+2度実験、+4度実験と合わせて、地球温暖化に対する日本周辺の気候変化のスケーラビリティ(全球気温上昇量に対する将来変化の線形性)について調査した。d4PDFの現在気候をアメダス観測や高解像度モデルと比較して確認したところ、NHRCM20は日スケールの気温や降水の再現性について高解像度モデルの結果と同程度の性能を示した。日本の将来の気温上昇は、全球気温上昇量に対してスケーラブルであり、日本では北ほど温暖化が大きく、全球気温上昇量が大きくなると南北の温暖化コントラストは拡大する。日本周辺の気圧変化は、冬の東西の気圧差は小さくなり、夏は南で気圧が高くなり、東で低くなる。この気圧変化の特徴は全球気温上昇量に対してスケーラブルであった。年間降水量は全球気温上昇に関わらずほとんど変化しないが、年最大日降水量は全球気温上昇量に対して概ねスケーラブルであり、1度の上昇当たり5%~7%の増加を示した。全球気温上昇量を2度から1.5度に抑えた場合の日本における影響は、平均気温が0.7度低くなり、年最大日降水量は2.7%増加が抑制される。