日本語要旨

土石流発生域における無人航空機を用いた多視点写真測量の空間的な精度分析

土石流発生域において,流路内の土砂の侵食と堆積による土砂貯留量の変動は,土石流の発達規模に影響を与える重要な境界条件であるが,地形が急峻であるため高頻度な調査は難しい。小型無人航空機(ドローン)を用いた多視点写真測量(UAV-SfM)は,このような土石流発生域での地形調査での活用が期待されているが,急峻な地形におけるUAV-SfMの精度は十分に検証されていない。本研究では,土石流が頻発する静岡県・大谷崩源流域において,UAV-SfMによる地形測量の精度を,地上レーザースキャナで得た地形データと比較することで評価した。その結果,UAV-SfMおよび地上レーザースキャナで測量された水路床付近の標高差は±0.4 mの範囲内に収まり,流路のプロファイルはよく一致していた。これは,土石流発生域でのUAV-SfMが,十分な地形の再現性を有することを示している。一方で,UAV-SfMの測量結果において,局所的ではあるものの,地上レーザースキャナと比較して標高が低い領域が生じた。これは,UAV-SfMの技術的な問題から生じる歪みが原因だと考えらえた。これが原因となり,両者の差分から算出した体積には,正負でずれ生じ,土砂貯留量の正確な推定が難しいことが分かった。この体積の算出における偏差を改善するために,地上レーザースキャナで得た点群データを使用して,反復最近傍点(ICP)アルゴリズムによりUAV-SfMで得た測量結果をアライメントした。これにより,両者の標高差が減少し,体積の算出における正負の差が同等となるほど善された。したがって,ICPを用いた測量結果のアライメントは,土砂貯留量の把握に不可欠な体積算出の高精度化という観点から,UAV-SfMを土石流発生域で使用する上で,有効な手法となると期待される。