地球温暖化がもたらす中部山岳域の高山における極端多雪年と少雪年の変化
- Keywords:
- Mountainous snow cover, Heavy snowfall, Regional climate modeling, Global warming, Dynamical downscaling, Japan's Northern Alps
地球温暖化に伴う中部山岳域における将来の降積雪の変化を調べるために、地域気候モデル(NHRCM)を用いた地域気候変化予測計算を実施した。NHRCMの境界条件には「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」の20km領域版(d4PDF20)を使用した。d4PDF20は工業化前から世界平均気温が2度及び4度上昇した気候を想定している。まず、5km格子間隔のNHRCMを用い、d4PDF20の過去及び2つの気候下において、それぞれ372年の計算を実施した。次に、372年の中から中部山岳域の標高1,000m以上の地域における年最大積雪深の上位5年、中央5年、下位5年を選び(それぞれ、豪雪年、中央年、少雪年と呼ぶ)、格子間隔1kmのNHRCMを用いて詳細な降雪量・積雪深の計算を実施した。
北アルプス北部の標高2000m以上の地域では、地球温暖化の進行に伴い、豪雪年において、12月から2月に降雪量が増加することが分かった。この結果、2月の積雪深は現在に匹敵するほどの量になる可能性がある。また、多雪年は強い日降雪(いわゆるドカ雪)の頻度も増加することが分かった。一方、標高が500m以下の低標高地域では、4度上昇した将来においては、日降雪量の強度に関係なく降雪頻度が減少することが予測された。豪雪年は、日本海寒帯気団収束帯及び北アルプスの日本海斜面において降水量の増加がみられ、冬季平均気温がかなり低い高標高域では降水量の増加が降雪量の増加につながったといえる。それに対し、少雪年は高標高域であっても大幅に積雪深及び降雪量が減少した。以上のことから、地球温暖化が進行した将来、北アルプスの高標高域では多雪年の厳冬期の降雪は現在よりも増加する一方で、少雪年の降雪や積雪は現在の少雪年よりもさらに少なくなり、多雪と少雪の極端化が進む可能性があることが分かった。