Argoフロート搭載のSBE41 水温・電気伝導度センサー検定の新しい効率的な手法
- Keywords:
- CTD sensor, Sensor screening, SBE41, Simple calibration method, Water temperature control, Global Argo observation system
世界の海洋をリアルタイムに満遍なくモニタリングし,地球温暖化や気候変動に伴う海洋内部の微小なシグナルを正確に検出しつつ,海洋循環や海洋環境を監視する目的で開始されたArgo計画.その計画のもと構築された全球Argo観測システムに用いられている海洋観測機器「Argoフロート」に搭載されているSBE社製水温・電気伝導度・圧力センサー(SBE41 CTDセンサー)の精度は,目標精度(水温0.005度,塩分0.01PSS-78)以内に保持される必要があり,フロート投入前のセンサー精度検証が不可欠である.そのために,比較的安価で実施者が専門的な技術を持たなくてもArgo計画の目標精度を満足しないエラーセンサーを効率的に検出できる,新しいCTD検定システム(J-Calibration)を開発した.従来のSBE社のセンサー検定システム(CTDセンサー部を分離させ校正バズを用いて海水に浸し,基準センサーと比較検証する手法(SBE-Calibration))と異なり,J-Calibrationでは,センサー部に直接海水を流し込み,基準センサーと比較検証するため,検定に必要な海水量も少なく分離させる必要もない.このため,海水の性質を均一性も保ちやすく比較的短時間で実施が可能となった.検定実施時に基準センサーやCTDセンサー自体が発する熱や室温変化の影響等を極力受けないような様々な工夫を行い,システムの検定精度の検証を行った結果, J-Calibration はSBE-Calibrationと同程度の性能を持たせることができ,かつ個々の検定の誤差が小さく安定的な運用ができるようになった.この実用的な検定システムにより,Argoフロートに必要な水温・電気伝導度の精度であるかどうかの検定作業にかかる時間が1/6程度に短縮できた.以上のJ-Calibration の開発は,現在Argo計画で課題となっている,フロート投入前のセンサー検定を効率よく行い高品質の水温・塩分データの提供をいかに実現するか,という課題解決に貢献し,近年地球科学分野で多く進められている高精度な広域観測を実施するための1つのヒントとなりえる.