日本周辺の深発地震からの上昇S波が作る強い変換P波
- Keywords:
- Deep earthquakes, S to P conversion, sP phases, Shear-coupled PL wave, Guided waves in subducting plate
太平洋プレート内で深発地震が起きると、短周期(<1秒)の強く、長く続く揺れがプレートを伝わり、日本列島の広い範囲に大きな震度の地動が生じる(異常震域)。ところが、特に震源が深い(>500〜600 km)地震では、プレートの外(マントル)を通って日本列島に到達する、長周期(>10秒)のS波が、大きな地動の原因となる場合がある。近年の日本周辺で起きた3つの深発地震である,2010年ウラジオストック地震(Mw6.8; 578 km)、2015年小笠原諸島西方沖地震(Mw7.9, 680 km)、2012年サハリン沖地震(Mw7.7; 598 km)のF-net広帯域観測記録と、地震波伝播の数値シミュレーションに基づいて、これらの深発地震により日本列島で観測された長周期の地震動の特性を調べた。
深発地震から最初に到着する長周期の地震動は、震源から放射されたS波が地表に広角に入射することでで生成する、振幅の大きなsP変換波である。深さ600 kmの地震では、震央距離約8°(900 km)付近からsP変換波がS波の先駆波として観測される。sP変換波は、地殻内を広角反射の繰り返しながら(sSPmp波)あるいは、モホ面に沿って(sPn)伝播する。特に、地殻の厚い(>35 km)大陸地殻では、sP変換効率が大きく、かつ厚い地殻の中を遠距離まで伝播することができる。このとき、sSPmpの伝播速度は上昇S波と等しく、2つは干渉を起こして、より長周期の(10-30秒)s-PL波を作る。S-PL波は、Rayleigh波のLeaking modeとして解釈され、一般に浅い地震から生まれるS-PLは伝播とともにすぐに減衰する。しかし、深発地震により作られるs-PL波は、震源から地殻に供給されるS波がs-PL波を次々と作り出し、大陸地殻を1000 km以上にわたって伝播し、遠地に長周期の揺れを伝える。